@神の御子はみな踊る
マルクス兄弟が主演した『マルクス一番乗り』(1937・MGM)のために、ガス・カーンが作詞、ブロニスラウ・ケイパーとウォルター・ジャーマンが作曲して、特別出演のアイヴィー・アンダーソンが歌った。アート・テイタムやバド・パウエル、スタン・ゲッツを始めインストのレコードのほうが圧倒的に多いが、ジューン・クリスティ(キャピトル)やトニー・ベネット(ソニー)らのヴォーカル盤もある。クリスチャンのイントロが聴こえてきただけで、このアルバムの素晴らしさが予見できる。
Aダブル・レインボウ
ラテン・アメリカを舞台に、ユーゴ出身のベキム・フェーミュやフランスのシャルル・アズナヴール、そしてキャンディス・バーゲンが出演した『冒険者』(1970・パラマウント)からのナンバー。作詞はジーン・リーズ、作曲はアントニオ・カルロス・ジョビン。バックにマイルス・デイヴィスの「オール・ブルース」をモチーフに使っている。
Bザ・ルック・オブ・ラヴ
ピーター・セラーズ、デイヴィッド・ニーヴン、デボラ・カー、ウィリアム・ホールデン、ウディ・アレンほか豪華キャストが出演したジェームス・ボンド物のパロディー作品『007/カジノ・ロワイヤル』(1967・コロンビア)の主題歌。ハル・デイヴィッドが作詞、バート・バカラックが作曲して、アカデミー主題歌賞にノミネートされた。
Cラヴァーズ・イン・ニューヨーク
オードリー・ヘプバーンとジョージ・ペパードが主演した『ティファニーで朝食を』(1961・パラマウント)のテーマ曲。この映画では「ムーン・リヴァー」が圧倒的にポピュラーだが、やはりヘンリー・マンシーニが書いたこちらもなかなかの佳曲だ。主人公のふたりがニューヨークの街を漫ろ歩くシーンで2度ほど演奏され、映画の公開後にジェイ・リヴィングストンとレイ・エヴァンスの名コンビが歌詞を書いたが、レコードはジョニー・マティス(マーキュリー⇒コロムビア)やマリーン・ヴァープランク(オーディオファイル)程度しかなかった。ダイアンの軽やかな歌声やスイング感がこの曲にピッタリだ。
Dヒズ・ア・トランプ
ロジャース&ハートの「レイディ・イズ・ア・トランプ」ではない。ウォルト・ディズニーのアニメーション映画『わんわん物語』(1955)からの曲で、声の出演をしているペギー・リーがソニー・バークと共作したが、1952年には出来上がっていたようだ。映画の中で歌ったのもペギー・リー。ダイアンはサンバのリズムに乗って表情たっぷりに歌う。
Eザ・バッド・アンド・ザ・ビューティフル
『ローラ殺人事件』の作曲で名高いデイヴィッド・ラクシンが書いたラナ・ターナーとカーク・ダグラス主演の『悪人と美女』(1952・MGM)のためのテーマで、1960年になってアンドレ・プレヴィン夫人のドリー・ラングドンが歌詞をつけた。トニー・ベネットとビル・エヴァンスの共演盤(インプロヴ⇒コンコード)同様、ダイアンもクリスチャンのピアノとのデュオで歌っている。
Fアイム・オールド・ファッションド
ミュージカル映画『晴れて今宵は』(1942・コロンビア)で、フレッド・アステアとリタ・ヘイワース(の吹き替えナン・ウィン)が歌った。作詞はジョニー・マーサー、作曲はジェローム・カーン。ダイアンはボサノヴァのリズムに乗ってエレガントにスイングし自在にフェイクする。
Gロング・グッドバイ
バーブラ・ストライザンドと一時結婚していたエリオット・グールドがレイモンド・チャンドラー原作のミステリー小説『長いお別れ』の主人公フィリップ・マーロウに扮した、ロバート・アルトマン監督作品『ロング・グッドバイ』(1973・ユナイト)の中で、ジャズ・トランペッターで歌手/俳優でもあるジャック・シェルドンが歌った。作詞はジョニー・マーサー、作曲はジョン・ウィリアムズ。
Hクロース・イナフ・フォー・ラヴ
ミステリー映画の主題歌が続く。こちらはダスティン・ホフマンとヴァネッサ・レッドグレーヴが主演した『アガサ 愛の失踪事件』(1979・ワーナー)のテーマで、作詞はポール・ウィリアムズ、作曲はジョニー・マンデル。トニー・ベネットの圧倒的名唱(ソニー)はきわめてスローなバラードだったが、ダイアンはミディアムでスイングしながらイマジナティヴな世界を創り上げていく。
I007は二度死ぬ
ジェームス・ボンド映画からもう1曲。こちらは本家ショーン・コネリーの第5作、日本を舞台に浜美枝、丹波哲郎が共演した『007は二度死ぬ』(1967・ユナイト)のテーマで、レスリー・ブリッカスの作詞、ジョン・バリーの作曲。映画ではナンシー・シナトラの歌が流れたが、有名曲のわりにカヴァーが少なく、ダイアンの歌は貴重だ。
Jワイルド・イズ・ザ・ウィンド
アンナ・マニヤーニとアンソニー・クイン、アンソニー・フランシオサが共演した『野性の息吹き』(1957・パラマウント)の主題歌。作詞はネッド・ワシントン、作曲はディミトリー・ティオムキン。映画中でも聴かれたジョニー・マティスのレコード(コロンビア)が決定版で、ビルボード・チャートの22位にランクされた。2003年のバーブラ・ストライザンドのソニー盤(アルバム『ザ・ムーヴィー・アルバム』に収録)も素晴らしかった。ダイアンの一途な歌い方が心に沁みる。
Kカーニヴァルの朝
仏カンヌ映画祭グランプリ、米アカデミー外国映画賞を受賞したマルセル・カミユ監督作品『黒いオルフェ』(1959・仏ディスパ)から。音楽全般はアントニオ・カルロス・ジョビンが担当したが、この曲はルイス・ボンファが書きためてあったメロディーにアントニオ・マリアが歌詞をつけたもの。英語の歌詞が2種類あるが、ダイアンは原語(ポ語)で歌っている。このトラックのみギターはダイアン自身。
Lインヴィテーション
ヴァン・ジョンソンとドロシー・マクガイアが主演した同名の映画(1952・MGM・本邦劇場未公開)は、感傷的過ぎると評判は芳しくなかった。テーマ曲にはラナ・ターナー主演の『ア・ライフ・オブ・ハー・オウン』(1950・MGM・本邦劇場未公開)で使われたブロニスラウ・ケイパーによるメロディーが流用され、1956年にポール・フランシス・ウェブスターが歌詞をつけてスタンダード曲となった。相当の難曲だが、ダイアンの歌は安心して聴ける。